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旅行作家 杉田房子

手作り熟年の旅の高田夫妻

 定年退職後「まず何をするか」の問いに、圧倒的に多い答えは「旅」。気ままな旅をする人あり、手軽なツアーの利用者あり。一昨年文藝春秋企画出版部から『アイルランド讃歌・手作り熟年の旅』を出版した高田さんは、文は信也さん、カバーや口絵は裕子さんの作品。旅は道連れといいますが、このご夫妻は実にいいカップルで、羨ましい旅を重ね、ご著書はアメリカ、イタリア、英国、スイスに続きアイルランドと5冊を数えます。
 63歳の時、右の腎臓を摘出する大病を患った信也さんは心機一転。それまでの働き蜂同然の生活を改め、2人の自称「手作りの旅」にはまりました。以後訪れた国は十数ヵ国。共通して魅力的なのが、それぞれの国の歩んできた「歴史」と「人間の温かさ、優しさ」。アイルランドの著書のサブタイトルは「おおいなる田舎五千キロを走る」で、レンタカーを使っておおまかなスケジュールで走り、知り得た情報と的確な判断で宿やレストランを決めます。これが間違いないというのですから、本物の“旅人”。外食に飽きたら、車に食料を積んで台所付きの宿で自炊をします。信也さんの趣味の釣りで釣り上げた魚は、刺身や焼き魚にして大満足の食事。車を完全に旅の友にしているのは羨ましい限りです。私の旅は、カメラのシャッターを押しているか、メモしているかなので、自分で運転してはいられません。
 運転している信也さんは、80歳に手の届くところまで来てしまったので、海外でレンタカーを借りられる75歳を通過してしまいました。次の旅から旅の方法が変わるようです。古希前後から旅をして、変身していく自分を感じることの楽しさ。たそがれ時に近づいた時に、新たな別の人生が始まるような気持ちになるといえば、おおかたの人は、是非自分も同じような経験をしてみたいと思うに違いない、と信也さんは言っています。
 素晴らしい熟年の旅人、高田夫妻。心が震えるほど羨ましく、著作は感動を与えてくれます。