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平尾 順

てんかんに対する薬物治療

 ジャロンは、てんかんの薬物治療が、制度的多剤治療から教義的単剤治療を経て、合理的多剤治療に変化したと指摘しています。もう少しわかりやすい書き方をします。

 てんかん治療は伝統的に多剤併用療法でした。つまり、いろいろな種類の抗痙攣剤を併用することにより、有効性は上昇し、副作用は減弱すると考えられていたのです。この考え方を制度的多剤治療と言います。しかし、実際は、有効な抗痙攣剤が少ないために、多剤を併用しないとコントロールできなかったのです。しかし、現在では、こういった治療は完全に否定され、今では、2剤併用を試みる価値はあるが、3剤以上の併用は効果が生じることはまれで、副作用が増強すると言われています。この背景にも、てんかんをコントロールできる薬が増えてきたことがあるのです。にもかかわらず、現在のてんかんに対する薬物治療の主流は、単剤治療です。最も重要なのは治療を開始する際に、いかに患者さんに適した抗痙攣剤が選択されるかということです。最初に選択した薬物でてんかん発作がコントロールができない場合は、他の薬物の単剤治療に変更すべきなのです。

 1990年代になると、新たな抗痙攣剤の開発が報告されるようになり、合理的多剤治療に関心が寄せられるようになりました。作用機序の異なる抗痙攣剤の併用が効果を増強させるのであれば、多剤治療は単剤治療を上回る有効性を示すはずだ!という考え方です。以前の制度的多剤併用療法に戻ったのではなく、有効な薬剤が増えたことで、副作用を出すことなくてんかんをコントロールできるケースが出てきたのです。しかし、未だに、多剤治療による効果の増強を統計的に証明した臨床研究はないようです。難治性てんかんに対する治療は、試行錯誤を繰り返している状態です。一度、脳神経外科への受診も考えてみて下さい。