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平尾 順

貧血で倒れた!の真相

 学生時代、朝礼の最中に、友人が倒れるのを目撃した方は多いのではないでしょうか? 保健室に連れて行かれ、しばらく休んで教室に戻って来る程度のものです。世間では「貧血で倒れた!」と言われることが多いようですが、医学用語での貧血は、輸血を必要とするような赤血球値の低下を貧血と言います。前出の様な意識消失の原因の多くは、医学的な貧血ではなく、血管迷走神経反射と呼ばれるものです。

 迷走神経反射…聞き慣れない言葉だと思います。迷走神経とは脳から出る神経の一つで、自律神経系と関係が深い神経です。内臓(胃腸や心臓、血管など)に分布しておりヒトの生命活動に直接関わっている神経です。

 通常の状態では交感神経と副交感神経が絶妙なバランスをとって内臓などの機能を維持していますが、何らかの原因で副交感神経が必要以上に活発になると、末梢の血管が拡張して急に血圧が下がり、脈拍が遅くなります。血圧の低下に伴って脳に向かう血液の量が減ることで、目の前が暗くなり、意識がもうろうとなって倒れてしまうのです。脳への血流低下が、ある程度の時間以上継続した場合、体や手足が痙攣することもあります。この状態を改善しようと、その後に交感神経が活発に活動を始めて、今度は逆に血管が収縮して手足が冷たくなり、発汗し、吐き気が生じるのです。この時、不安感から、過換気を起こす場合もあります。健康な人でもこの反射が起こることがあります。たとえば、排便時のいきみ、冷水に顔をつける、嘔吐などの行為で迷走神経が刺激されます。また、満員電車での不快感、恐怖感、強烈な痛み、採血などでも迷走神経が緊張します。排尿後や排便後など、腹圧の急激な変化によっても迷走神経が刺激されて、失神が起こることがあります。循環器系のお薬を内服されている方は、特に、気温が急激に下がった早朝等には、上記の様な行動に十分な注意をしていくことが望まれます。