おばあさんと言わないで
我が師・大宅壮一先生は、マスコミの神様と言われていましたが、奥様、昌さんは明治女の芯の強い聡明な美人。評論家・大宅映子さんのお母さんです。大宅先生をして「恐妻家」の名を広めたのも事実。
昌さんは昨年100歳の誕生日をご家族で祝いましたが、今年に入り、百歳七ヶ月の長寿を全うされました。そして7月24日「大宅昌さんを偲ぶ会」が開催され、大勢の方が集まりました。お花が大好きだった昌さんの会ですから、会場一杯花で埋め尽くされる華やかさ。
大宅先生が逝かれた時、昌さんは64歳。海竜社の女社長に勧められ3冊の本を出版なさいました。「どうして老いばかり書かせるのよ」と言いながらも立派な文章。その一冊『生きて花老いて華』を頂戴し、興味深く読ませていただきました。昌さんは71歳で四国巡礼をなさいましたが、自分で老いを感じたのは80歳からだそうです。しかし、タクシーに乗った時「オバアサン、元気ですね」と若い運転手さんに声を掛けられたらカチンと頭にきて、すかさずこう切り返しました。「オジイサン、運転キャリア何年?」。さすが運転手さんもピーンときて「ごめんなさい」を繰り返したそうです。
「いわれなき人におばあさんと呼ばれたくない」の信念を持っているので、鮮やかに切り返しができたのですが、普通の人だとムッとするだけで切り返しはできないでしょう。田辺聖子さんの『姥ざかり』という本の中でも、おばあさんと呼ばれるのをひどく嫌がる文章が多く書かれています。乗り物の中で気軽に「オバアサンどうぞ」など言ってくれるな。「へえ、おおきに」と言って機嫌の悪い顔をするのだそうです。
現在100歳以上の日本人は2万人を突破したそうですから、100歳以下はまだ若い若い──と思って良いのでしょう。人は間違いなく老いていきます。「オバアサン」の一言には注意した方が安全のようです。
旅を100倍楽しむ法
もしもししんぶん 2007/09/27 号掲載




