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旅行作家 杉田房子

料理人

 一度読んだ本でも、数年後もう一度読み直すと、また新しい発見があり、こんな面白い本だったのかと感激することがあります。

 その一冊が『料理人』(ハヤカワ文庫、ハリー・クレッシング著)。表紙の裏には「人間とは食事を楽しむ動物である」(古い料理書) とあり、「食事を楽しむ」がこの本の全頁に流れていて、主人公の料理人コンラッドのような人が身近にいたらいいのに、と思わずにはいられません。ちょっとした家では料理人を置いていた時代ですから、今とは違います。コンラッドの料理が美味しいので、この家では昼に夜に客人を招いて、お客様にご馳走します。食費が嵩んで、大丈夫かしらと心配。子ども達の結婚パーティーが続き、やがては財政は傾きます。それより先に料理を楽しみ続けた両親が、暴飲暴食が原因でベッドの中で死んでいるのが発見されたり、美食を研究し続けた人も食べ過ぎで一人では歩けないように太ってしまいます。

 この悲劇とも喜劇とも言える美食の探求。しかし、普通の生活をしている私たちは、一日に何度「美味しい物を食べたい」と思うことでしょう。これは人間として当然のことですが、さりとてレストラン通いも味に飽きがきます。食事の度に料理を作る主婦は、外出時にレストランの味を楽しむのは、味や盛り付けの勉強になるばかりか、気分も変わっていいことです。しかし、味を良くし舌に心地よさを与えるためには、バターや砂糖などを多く使うことが多いので、続けて食べれば『料理人』の登場人物のようにブクブク太り出してしまいます。

 チケットをいただいたので『幸せのレシピ』という映画を観ました。主役は女コック。姉の急死により小学生の姪を引き取り苦心の子育て。その子と仲良くなれたのは料理を一緒に作ったことから。やがてコックの恋人が出来、三人で仲良くレストラン開店というハッピーエンド。料理の深さ、人の心を捕らえるような料理ができる人は羨ましいです。